リターナブルびんポータルサイト



びんリユース事例紹介

大分県日出町

地元の3者協定によって推進されるリターナブルびん回収
びんリユースでの循環型社会の形成に向けて

大分県日出町では、行政と中身事業者、洗びん事業者の3者協定でリターナブルびんである一升びん(1.8L)、丸正900mlびんを対象にした空きびんのリユースを推進しています。今回は日出町住民生活課ご担当者と町内に工場を持ち回収と洗びんを担当する長松商店 長松社長にリターナブルびん回収とリユースについて伺いました。

大分県日出町住民生活課生活衛生係 主査 阿南 聡仁 氏

住むことに喜びを感じるまちを目指して
日出町のこれからと3R

近年、日出町は大分市・別府市からも近い良好なアクセス環境も手伝い、ベッドタウンとして、人口減少の進む大分県の中で最も人口減が少ない地域となっています。

ファミリー層に向けた商業施設やインフラなどの開発が日々進む中、豊かな自然と城下町の文化が調和したこの町本来の魅力も守っていかなくてはなりません。

そのため3R(リデュース・リユース・リサイクル)活動には早くから目を向け、取り組んできました。呼びかけに応えてくださった企業・店舗の参加協力にも助けられ、再使用や再生利用の意識は徐々に根付きつつあり、ごみ発生量は抑えられています。今後もこの傾向をさらに進められるよう、3Rに向けた啓発活動を継続して行っていく必要があると考えています。

新たに始まったリユース活動
リターナルびんの積極的な利用を推進

町役場回収ステーション

町役場の回収ステーションでの住民生活課 阿南主査

日出町のリターナブルびん拠点回収は、2022年4月より開始されました。現在は、町役場新館と中央公民館、川崎地区公民館の3ヶ所に回収ステーション設けて実施しています。

回収ステーションはそれぞれ屋外に設置されており、町民はいつでもびんを出すことが可能となっています。ただしご利用いただく上で、びんの中を洗い、しっかり乾かされたものが前提となるので、町民の皆さんのご理解とご協力あっての活動であると言えます。

こうした周知活動は、町が配布する広報誌やごみ収集カレンダーが主ですが、早い段階で地元紙・大分合同新聞の記事で取り上げていただいたことは、とても効果的だったと思います。町の広報では、一升びん(1.8L)、丸正900mlびんが回収対象となっていますが、回収ステーションには他に4号びん(720ml)が排出されることがあるため、今後もさらなる周知徹底を目指します。
中央公民館回収ステーション

中央公民館入口付近に設置した回収ステーション

川崎地区回収ステーション

川崎地区公民館 建物脇に設置した回収ステーション


地元の酒造会社とびん商とで結ぶ協力体制

これまで約1年間回収を行なった成果は、2022年4月〜2023年1月の10ヶ月間で一升びんが1,545本、丸正900mlびんが155本でした。今後もより良い収集場所の選定を続け、増設していくことを検討中です。

そして回収されたびんは、地元のびん商(リターナブルびん回収・洗浄事業者)の長松商店で洗浄・殺菌・検査され、それを日出町内にある二階堂酒造が再利用・再充填し、商品として出荷しています。

リターナブルびん回収を始めた経緯としては、二階堂酒造と長松商店からの共同提案をいただいたことから始まりました。これが日出町総合計画の政策と合致し、この3者での協定を実現することができました。回収したリターナブルびんを洗浄するのは長松商店、そのびんを二階堂酒造が再使用しています。全国的にも知名度のある二階堂酒造が参画することで、より広く認知されるようになったと思います。

株式会社 長松商店 代表取締役社長 長松 浩三 氏

回収後の洗浄作業について ー長松商店ー

長松商店

日出町にある長松商店の工場

当社の洗浄ラインは、洗びんラインとP箱(軽量で頑丈なプラスチック製の通い箱)の洗浄ラインがあります。

集荷したびんは種類ごとにまとめ、出荷スケジュールに合わせて一升びんや丸正900mlびんなどびんごとに洗びんラインで洗浄・殺菌します。最初に、びん選別や異物の除去は手作業で行い、ラインに流してからは、油が入っていたり臭いが残っているものがないか、1本1本担当者が臭いをかいで確認します。ここで洗浄が不可と判断したものは、リサイクル原料へと回します。

洗びん工程では、洗びん機で水や最大80度ほどに温度を上げた苛性ソーダの洗浄液を使い、30分ほどかけて洗浄し、きれいに濯がれます。洗浄後の検査工程では、目視でラベル跡などが残っているびんは取り除きます。そして、口・肩部、胴・底部とそれぞれ部位ごとに担当者が配置され、欠けや傷などがないかを、一本ずつ光をあてて検査します。担当者は15分ごとのシフトでローテーションを組み、見逃しやミスのないよう、集中力を維持した、より確実で精度の高い作業を行っています。こうして検査を終えた一升びんは、再び洗浄済みのP箱に入れて、酒造メーカー等に出荷されます。

当社の取引先は二階堂酒造がメインとなっていますが、現在の出荷数はすでにコロナ前に戻っているか、むしろ以前よりも多くなっている印象です。しかし回収においては、今回取り上げていただいているリターナブルびん回収とは別に、自治会等での集団回収も行われていますが、自治会活動そのものの減退もあり、集団回収の収集量は減少傾向にあります。加えてガソリン価格の高騰もあり、回収トラックの手配などで厳しい状況もありますが、リターナブルびんは日本の風土・慣習に合った合理的で伝統的な容器であり、それを守り、使用していくことが重要だと考えています。

洗びん機

洗びん機に入る前に流れてきたびんが整列

出荷前P箱に入れた一升びん

出荷前のP箱に入れた一升びん


大分県日出町住民生活課生活衛生係 主査 阿南 聡仁 氏

地元で創造するコンパクトな循環型社会
日出町だからこそできる環境貢献を

一般的に資源ごみとして集められたびんは、ガラスびん原料や他用途にリサイクルされます。ガラスびんに水平リサイクルされることで資源循環されますが、新たにびんを製造するにはエネルギーが必要となります。リユースすることで新びん製造のエネルギーを節約でき、CO2排出量も削減できます。

日出町では、空きびんの行政回収は月2回、集団回収は地元の子ども会や老人クラブで月1回行われていますが、2020年度は約110トンを回収し、うち2割ほどが無駄になってしまったということです。

一方、回収ステーションでは、町民はいつでもリターナルびんを排出することができますし、回収したびんは全てがリユースもしくはリサイクルされています。

びんリユースは、1回リユースするだけでもCO2排出量は大きく減少できますし、3回リユースすると、CO2排出量は使い捨てした場合の半分となります。

日出町では、地元で集めたリターナブルびんを地元で洗びんし、地元の企業でリユースしており、理想的な地域循環型社会を実現することで、より環境負荷を低減することができています。

町民の皆さんには、この取り組みに協力することで環境貢献できていることに誇りを持っていただきたいと思います。それをより実感していただけるよう、今後も積極的に取り組んでいきたいと思っています。